とある子どもの兄弟バトル

これは、ある少年から聞いた話の一部始終である。

少年が浮かない顔をしているので、あるぴよは話しかけた。

「どうしたん、なんか嫌なことでもあった?」

すると以下の内容を話してくれた。

・今日は母親が仕事で泊まりのため不在である

・夜ご飯代として1500円もらっている

・それは兄の分と合わせての金額であり、その使い道に関して悩みがある

なるほど

(子ども一人分で1500円とは中々太っ腹だ!けっこう豪遊できちゃうやん!と一瞬思ったが、二人分なら単純計算一人750円、妥当な金額かもしれない)

いや、そこは兄弟なので格差が生じるかもしれない。兄が800円900円持っていく可能性もあるか。

だが事はそう簡単にはいかなかった。

なにやら兄が家にある材料をつかって自炊を企てているらしい。

天才的である。

あるものを駆使し、なんとかして現金を手にしようとしているのだ。

兄の企てを知って少年は言ったそうだ。

「僕もそれ食べようかな」

それが火種となった。

その言葉(LINE)を受けた兄は自分が料理を作る代わりに1500円全額をよこせと要求してきたらしい。

あるぴよはきょうだい仲が良かったので衝撃を受けた。

男兄弟の生きる道をはこんなにも険しいものなのかと。

しかも弟の経験談をきくに、武力衝突の可能性も高い。

5つ離れた兄に戦力で敵う道理はない。

弟を・・・救いたい。

あるぴよの心に使命感、あるいは同情だろうか、何かしらの感情が芽生えた。

まずは現状把握である。

16:00現在 兄→部活中 弟→あるぴよとの対談

・1500円は弟が現在握っている

・兄はすでに朝もしくは昼から作戦を開始(料理の仕込み)している。

・兄は18:00より別作戦(バイト)開始、帰還に合わせての炊飯を弟は命じられている。

・兄が料理を作る代わりに1500円を渡すという契約は、弟はまだ承諾をしていないために成立していない。

まずもって

家の共通財産たる資材を使っての調理、また弟も炊飯という労働力を提供する以上、全額を兄がゲットするというのは理不尽である。

状況から考えるに完全なる折半は厳しそうだが、弟も協力するのであれば相応の金額をもらい受ける権利がある。

だが仕込みとやらをしている兄の働きに比べると炊飯のみというのはやや弱い。

対等な協力までもっていけるよう1品、いや2品料理を追加してやればいい。

少年は首を横に振る。

料理ができないと。

さもありなん、少年はまだ幼い。

私も小学生のうちはカップラーメンすら作れなかったと話したら

それは鼻で笑われた。なんでや

兄いわく今月お小遣いをもらっていなくてお金がなく、

腹をすかせた猛獣が如く、金にがめつい状態にあるらしい。

正論、交渉、そういったものに耳を傾けないモンスターであると。

ひとつの案として

もう制裁覚悟で一矢報いるために

自炊手伝い拒否できっかり750円分の自分のご飯を買って帰り、

「店で買った飯うめえええええ!」と兄の前で食べながら750円を投げつける

ことも提案してみたが、弟の表情は芳しくない。当然である。

兄がすでに動き出しているというのが厄介である。

金額面で弟は了承していないとは言え、兄の自炊に乗っかることに意欲を示している。

また「炊飯」という重要な役割をやや一方的ではあるが任されているので

今更別の方法でご飯にありつく、というのは難しいだろう。

いろいろ話し合ったが、少年に刺さる妙案は思いつかず

けれど少年は自分の中から生まれたひとつの結論に至った。

「500円のモンブランを買って帰る」

どういうことだ。

一瞬全くわけがわからなかったが、作戦概要を話してくれた。

・兄はモンブランが大好きである

 (もちろん弟もモンブランが好きである)

 (ついでにあるぴよも好きである)

・兄の計画通り、自炊にのって自分も炊飯の役割を全うする

・炊飯手伝いを理由に500円もらう権利を主張し兄には1000円渡す

ここから分岐

兄が了承→めでたし。自分でモンブランを食べることができる。

兄激おこ→モンブランを捧げて怒りを鎮めてもらう。

なんということだ。

危険を予測し、最悪のケースに備えた保険かつ自分にとっても利となる選択肢を用意するとは!

(でもそれ普通に500円持っておけばいいだけでは?)

とも思ったが、

1500円という現金すべてを兄に渡したくない・・・!という彼なりの矜持が

モンブランという結論を導き出したのかもしれない。

ジーサス。勇敢なるこの者に加護があらんことを。

戦場へと向かう少年に祈りを捧げて見送った。

後日

少年に結果を聞いたところ

結局モンブランは買わずに普通に交渉をして

なんとか500円は確保できたそうな。

少年は少し釈然としない様子だったが、とりあえず拳による喧嘩に発展せず良かった。

想定はしていたが兄はもしかしてモンスターではなく

最初に「全額よこせ」という過剰な要求をしておくことによって

想定されうる交渉の妥協金額が自分に優位になるよう考えていたのではなかろうか。

弟が鵜呑みにすればあわよくば全額

そうはいかないだろうが、自分が譲歩した結果も、

折半ではなく自分にとってかなり優位な額で落ち着くように。

使い道に関して親からの言及もあるだろう。

いくら自分がメインで自炊したとは言え、1500円をすべて兄がもらい受けたとなっては世論(親)からの追求も免れまい。

荒唐無稽なモンスターではなく

怜悧狡猾なネゴシエイターだった

私は戦慄した。

兄とは、かように賢く、兄弟内序列の優位性と年の功により利を追求する存在だと

弟とは、かように虐げられ、それでも上位存在をつぶさに観察・分析しながら生きねばならぬバランサーであると

兄弟とは、かような争いの絶えない伏魔殿であると

少年よ、強く・・・強く生きてくれ!

という話でした!

大仰に書きましたし、フェイクも含みますが実際に子どもから聞いた話です。

いやー男兄弟って大変なんですね・・・

最後までみてくれた方ありがとーう

コメント

タイトルとURLをコピーしました